原発安くない大島教授 東京新聞の記事
2011年5月2日
宇佐美 保
2日前(4月30日)の東京新聞に[立命館大教授がコスト試算「原発安くない」政府の補助計算に入れず]との、前の拙文≪原子力発電は安価≠フ欺瞞≫に引用させて頂いた大島堅一氏(立命館大教授)の説が掲載されていましたので、その記事をそのまま紹介させて頂きます。
原子力発電は安い? 狭い日本列島に五十四基もの原発が並ぶ理由の一つが、一キロワット時当たり五・三円とされる発電費用(コスト)だ。ところが、大島堅一・立命館大国際関係学部教授(環境経済学)は「政府の補助などを加えると、二倍以上の一〇・六八円。福島原発事故の賠償額を論じるまでもなく、高コストだ」と異論を唱えている。
原子力発電の割合 (東京新聞紙面はグラフでしたが、表に書き換えました) |
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電力会社 |
原子力(%) |
北海道 |
35 |
東北 |
21 |
東京 |
28 |
中部 |
14 |
北陸 |
33 |
関西 |
45 |
中国 |
15 |
四国 |
41 |
九州 |
42 |
*
沖縄電力は原発を持っていない。2009年電事連調べ |
公表値の2倍以上
水力11.9円、石油10.7円、原子力5.3円−。この数字は全国の電力会社十社でつくる電気事業連合会(電事連)が、二〇〇四年に公表した電力1`h時を起こすのに必要な経費だ。
原子力が最も安くなっている。歴代政権と電力会社が、原発を推進してきた根拠の一つだ。
これに対し大島氏は、原子力+揚水12.23円、原子力10.68円、火力9.9円、一般水力3.98円−が本当のコストだという。
この違いは、電事連が、新たに発電所を造るとして計算した仮定のコストなのに対し、大島氏は、実際の費用を計算したためだ。電事連によると、仮のコストを使うのは、どの電源にいくらかかったか、実績値は企業秘密だからだ。
大島氏のほうは、電力各社の有価証券報告書からはじいた数字に、政府が原発を推進するために支出した税金を加えて計算した。これにより、原子力は一気に10.68円に跳ね上がる。電事連が言っているコストは、この政府支出分を一部しか含んでいない。
税金のうち電源開発促進税は一九七四年に設けられた。1`h時当たり八・五銭を電気料金に課し、特別会計に入れられ原発を受け入れた市町村に配った。ところが、七九年のスリーマイル島、八六年のチェルノブイリの両事故もあって立地は進まない。政府は交付対象を、スクールバス、葬儀場など電源開発と無縁の事業にまで広げた。
発電コストの比較 (単位:円/`h時、事故の賠償を含まず) |
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原子力 |
水力 |
石油 |
天然ガス |
石炭 |
電事連 |
5.3 |
11.9 |
10.7 |
6.2 |
5.7 |
大島教授 |
10.68 |
一般水力 3.98 |
火力 9.9 |
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原子力+揚水 12.23 |
受け入れた地元は「全国原子力発電所所在市町村協議会」などの全国組織を結成して、地域振興を政府に要望し、現在の経済産業省の外郭団体「財団法人日本立地センター」が支援した。〇七年度、この特別会計は整理・統合されたが、税が開発財源となるシステムは維持されたままだ。
大島氏によると、一九七四〜二〇〇七年度の特別会計は総額十兆五千三百八十億円。うち三分の二、約七兆円が原子力に使われた。一般会計からも支出がある。一九七〇〜二〇〇七年度のエネルギー対策費の総額五兆二千百四十八億円の97%、五兆五百七十六億円は原子力関連だ。
原発には、揚水とバックエンドという固有のコストもある。原発は常に一定の発電を保ち、夜は電力が余る。そこで、山中に巨大な池を造ってポンプで水を揚げ、昼の需要時に水力発電をする。
これが揚水発電といわれ、コストがかさむ。
バックエンドは、放射性廃棄物の処理や燃料を再利用する核燃料サイクルなど、発電後にかかるコスト。政府は〇四年、十八兆円と試算したが、青森県六ヶ所村の再処理施設すらまだ一部が稼働しただけだ。
大島氏は「原発は単体でも安くない。揚水とセットなら、最も高い。消費者は財政コストも負担している。福島原発で予想される巨額の賠償を考慮すると、さらに高くなる。論議すべき時だ」と指摘している。
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